DIRECTER’S INTERVIEW 監督インタビュー

いわゆる結婚モノのラブストーリーって、「結婚した次の日から人生バラ色」みたいに描かれがちですが、そこにはあまり魅力を感じませんでした。そこで、本当に信じているロマンティシズムみたいなものや、私たち世代の結婚に対する感覚ってこうだよね、というリアリティを映画にしてみたいと思ったんです。
描きたかったのはイベントとしての結婚ではなく、「人と出会い、その人のパーソナルな歴史を知る」というロマンスです。例えば子供の時のふとした出来事で、なんて事ないんだけど、なぜかずっと覚えている事ってありますよね。「その時、先生に怒られながら校庭の桜を見ていた」とか、「あの時、なぜか手のひらからオレンジの匂いがした」とか。私は誰かからそういうエピソードを聞いた時、その人のことが少し分かった気がするんです。そんな“特別ではない瞬間“の積み重ねによって、相手の小さな歴史を知っていく。それって、すごくロマンチックだと思うんです。
結婚や恋愛に対して斜に構えているようだけど、だからといってロマンスを信じていないわけじゃない。それが同世代の都会の女性が求めるロマンスの温度なんじゃないかと思います。

脚本は、友人のエピソードを流用したり、無駄話からヒントをもらったりして書きました。あと、最終稿を書くころには自分自身が結婚していたので、実体験として結婚式場の打ち合わせシーンを書き加えることができました。第一稿と最終稿では根本的なところは変わらなかったのですが、結婚後に書いた最終稿の方がより温かい話になった気がします。実際に結婚の準備から式までを経験してみて、主人公たちのダメな部分も応援したいという気持ちが強くなったのかもしれません。
タイトルは、それまでの自分を変えて相手に合わせるんじゃなく、ストライプス=そのままのふたつの平行線でOK!という思いで決めました。理想を求めて相手に変化を期待する関係って今の時代には向かない恋愛観だと思います。恋愛や結婚においても、相手との違いを“多様性”として受け入れるのが現代っぽいですね。

主人公のカップルは、それぞれつき合う友達のタイプが違っていて、さらに両サイドの文化圏がお互いを仮想敵のように見ている設定です。真生のまわりは都会生まれでみんな育ちが良い、中学や高校からの友達。年相応の趣味や遊びを上手に楽しむ反面、音楽なんかにはあまり詳しくないイメージ。一方の緑のまわりは、みんな音楽や映画に一家言あるタイプ。田舎から何かを目指して東京に出てきたけど、何となく諦めてフリーターになり、昔から好きだったものを趣味として楽しんでいるイメージです。東京は住む町や通う場所の選択で、多少なりともその人のキャラクターを想像できてしまうところが面白いと思うんです。田舎だとそうはいかないので。私や緑の世代って、十代の時にインターネットがそこまで普及していなかったから、田舎にいたら本当に何もできないっていう最後の世代だったと思うんです。だから緑の気持ちはすごく分かります。
緑は親友の裕子に“なりたかった理想像”を投影しつつも、いつの間にか自分は応援する立場に落ち着いてしまった人です。挫折とよべるほどの挫折もせず、「私には特別なことなんて起こらない」なんて嘯いていますが、時には少しだけロマンチックな瞬間がやってくる。それが結婚の良さなんじゃないでしょうか。

岨手由貴子 Yukiko Sode
1983年長野県生まれ。
大学在学中、篠原哲雄監督の指導の元で製作した短編『コスプレイヤー』が水戸短編映像祭、 ぴあフィルムフェスティバルに入選。 08年、初の長編『マイムマイム』がぴあフィルムフェスティバルで準グランプリ、エンタテインメント賞を受賞。 バンクーバー国際映画祭、香港アジア映画祭の他、国内外の映画祭でも上映される。09年文化庁委託事業若手映画作家育成プロジェクト(ndjc)で、初の35mmフィルム作品『アンダーウェア・アフェア』を製作。13年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で招待上映されたオムニバス映画「バナナvsピーチまつり」で短編『共犯者たち』を製作し、同映画祭でオムニバス企画として観客賞を受賞、同年6月都内劇場で公開。また、12年公開のオムニバス映画『BUNGO〜ささやかな欲望』内の『乳房』の脚本を担当。その他、ドラマの脚本執筆やミュージックビデオの監督等、多岐にわたる活動をしている。
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